こどもの理想的な睡眠時間はどれくらい?文部科学省の調査・厚生労働省の指針・国際比較

こどもたちの発育にとって必要なのが「睡眠時間」です。理想的な睡眠時間を確保できるようになると、学力が向上したり、発育が促進されたり、イライラすることが減少したりします。
しかし最近は、スマートフォンやゲームの普及、さらには勉強の影響により、こどもの睡眠時間が不足していると言われています。こどもにとって必要な睡眠をしっかりととらせてあげるための方法について一緒に見ていきましょう。
こどもの理想的な睡眠時間はどれくらい?
こどもの理想的な睡眠時間をご存じでしょうか?年齢によって違いますが、9~14時間くらいは必要だとされています。それでは年齢ごとに必要な睡眠時間について詳しく見ていきましょう。
厚生労働省の指針
厚生労働省の指針によると、こどもの理想的な睡眠時間は以下の通り推奨されています[1]。
- 1~2歳児:11~14時間
- 3~5歳児:10~13時間
- 小学生:9~12時間
- 中学・高校生:8~10時間
厚生労働省だけでなく、米国睡眠医学会もこの睡眠時間を適切であると推奨しています。理想的な睡眠時間は、こどもの成長に伴い徐々に短くなりますが、それでも、どの年齢においてもおおむね10時間以上の睡眠時間を確保することが望ましいとされています。
生後間もないころは、3~4時間おきに眠ったり起きたりを繰り返し、1日の大半を睡眠に費やします。3歳以上になると日中の活動が活発になってきて睡眠時間が減り、代わりにお昼寝をすることもあるでしょう。
小学生以上になると、学校や塾、習い事の影響で帰宅が遅くなる場合もありますが、それでも、10時間前後の睡眠時間を確保することが理想的とされています。
こどもの睡眠時間の実態

こどもの理想的な睡眠時間に対し、実際の睡眠時間は短い傾向があるというデータがあります。特に小学生になる頃から睡眠時間が減少し、中学生や高校生では大幅に不足していると言われています。
2012年の調査によると、幼稚園児では10時間以上の平均睡眠時間が確保されていました。しかし小学生では9~8時間、中学生で8時間未満、高校1年生で6時間半と[2]、年齢があがるごとにこどもの睡眠時間が短くなる傾向が見られます。
過去30年間の推移
学研による過去30年間のこどもの睡眠時間の推移をみると、30年間で平均約30分減少していることがわかります[3]。1989年には9時間28分だったのが、2019年には8時間57分に減少[3]したとのことです。
起床時間はほとんど変わらない一方で、就寝時間が遅くなったことが、こどもの平均睡眠時間の短縮につながったと考えられます。
文部科学省の調査結果
続いて文部科学省の調査結果では、次の3つの傾向が明らかになりました。
- テレビやスマートフォンをよく見ているこどもほど就寝時間が遅く、朝、布団から出るのがつらい[4]
- 年齢があがるほど就寝時間が遅くなっている[4]
- 睡眠が十分でないこどもはイライラすることが多い傾向がある[4]
こどもの平均睡眠時間は、年齢があがるほど短くなっていく傾向があります[4]。そしてテレビやスマートフォン、パソコンなどの情報機器に触れる機会が多いこどもほど、寝る時間が遅くなるので比例して睡眠時間も減っていきます[4]。
また、睡眠が十分でないこどもは、イライラしやすいとも報告されています[4]。
OECDの国際比較調査
OECD(経済協力開発機構)の国際比較調査によると、日本人は世界のなかでもとくに平均睡眠時間が短いとの結果でした。33カ国の平均が8時間29分であるのに対して、日本では7時間42分しか睡眠時間を確保できていません[5]。
睡眠不足の原因
こどもの睡眠時間が不足している原因とされているのが、スマートフォン・携帯電話・ゲーム・勉強です。電子機器から発せられる光は、入眠を妨げる可能性が高いとされています[6]。
また小学校高学年以降になると、受験などで勉強時間が長くなり、就寝時間が遅くなりがちになることも原因のひとつです。
睡眠不足の悪影響(身長・学力など)
幼少期に十分な睡眠時間を確保しないとその後のIQが下がってしまうこと、逆に睡眠時間をしっかりとることで、記憶力を司る脳の「海馬」が成長し、その体積も、睡眠時間の長い子供はより「大きい」ことが分かっています。
また睡眠中に分泌される成長ホルモンは骨や筋肉の成長に作用します。睡眠時間が不足していたり、睡眠の質に問題があると、この成長ホルモンの分泌量が低下してしまいます。そのため、十分な睡眠をとれていないと、身長の伸びが抑制される可能性があります。
こどもの睡眠時間を確保するためのポイント
こどもにとって、理想的な睡眠時間を確保することは学力・成長にとってとても大切なことです。それではどのように確保すればよいのでしょうか?こどもの睡眠時間を確保するための7つのポイントについてご紹介します。
寝室の環境整備
まずは寝室の環境を整備することから始めてください。特に重要なのは「光」「音」「寝具」の3つです。眠る前には電子機器から発せられるブルーライトを見ないようにしましょう。ブルーライトには覚醒効果があるためです。暖色系の照明を控えめに使用し、落ち着ける環境づくりを心がけましょう[5]。
心地よい眠りにつくには、睡眠中の音と快適さにこだわることも重要なポイント。心地よく眠れる寝具で眠りにつき、できるだけ静かな空間を準備することを心がけてください[5]。
早寝早起きの習慣化
早寝早起きを習慣づけることもポイントのひとつです。人間の体の中には「体内時計」があり、朝になると起きる、夜になると眠る…というスケジュールが組み込まれています。
ただし体内時計は規則正しい生活を送らないと狂いやすくなるため、毎日同じ時間に寝起きする習慣が必要です。早寝早起きを習慣化するようにしましょう。
起床時の日光浴
光には人の体内時計を調整するはたらきがあります。そして体内時計を調整するために欠かせないのが朝日です。
朝に浴びる太陽光が網膜から入ると、体内時計が調整されて生活リズムが整いやすくなります[9]。朝起きたら朝日を浴びるようにしましょう[5]。
健康的な食事
睡眠に意外な影響を与えるのが日々の食事です。朝起きたら朝食を食べて、体内時計の調整をしましょう。朝食を抜くと体内時計が狂ってしまい、夜更かしの原因になるといわれています[5]。
また眠りにつく直前に食べないことも大切なポイントです。食事は眠る2~3時間前には済ませておきましょう。眠る直前に食べると、睡眠の質が悪くなってしまいます。
適度な運動
こどもの睡眠時間が足りない…と思われるのであれば、日中の運動を促してあげてみてください。運動をすると身体が疲れるので眠りやすくなり、夜中に目が覚めてしまうことも減るはずです。
日中の運動が習慣になると、日々の眠りの質も高まるでしょう。ただし眠る直前の激しい運動には覚醒作用があるので、4時間前には激しい運動を終わらせるようにしてください[5]。
入浴の時間帯
心地よい睡眠のためには、入浴時間を調整することも意識しましょう。入浴によって深部体温が高まった後に低下すると、入眠しやすく熟睡しやすくなるといわれています[10]。1~2時間前に入浴を終わらせると、よい睡眠がとれるようになるはずです。
デジタル機器の時間制限
こどもの睡眠時間が短くなっている原因であるのが、デジタル機器によるブルーライトです[6]。睡眠前にブルーライトを浴びると覚醒しやすくなってしまうので、デジタル機器の利用時間を制限することも大切なポイントとなります。
眠る前にはスマートフォンやタブレット、テレビ、パソコンなどを使わせないようにすれば、より質のよい睡眠をとれるようになるでしょう。
まとめ
こどもの睡眠時間が減少する傾向があります。眠る前にスマートフォンやゲームを使用していることに加え、年齢が上がると、勉強のために就寝時間が遅くなるこどもも少なくありません。
ただし学力や体の発育のためには、睡眠時間を確保することが必要です。寝室の環境を整えたり、入浴や運動を促したりして、理想的な睡眠時間を確保できるようにしましょう。
[1]参照:厚生労働省:(PDF)健康づくりのための睡眠ガイド2023
[2]参照:健やか親子21:(PDF)未就学児の睡眠指針
[3]参照:学研教育総合研究所:小学生白書30年史(1989~2019年)
[4]参照:文部科学省:(PDF)睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査の結果(概要)
[5]参照:健康づくりネット:(PDF)良い目覚めは良い眠りから知っているようで知らない睡眠のこと
[6]参照:JSTAGE:(PDF)住宅照明中のブルーライトが体内時計と睡眠覚醒に与える影響
[7]参照:文部科学省:(PDF)第2章生活リズムの確立と睡眠
[8]参照:文部科学省:(PDF)成長スパートってなに?
[9]参照:NCNP病院:眠り、リズムと健康②