こどもが睡眠不足になる原因とは?与える影響や改善方法を解説

「こどもは何時間くらい眠ればよいの?」「こどもが睡眠不足になる原因を教えてほしい」などと考えていませんか。疲れているこどもを見て、心配している方もいるでしょう。こどもが睡眠不足になる主な原因は身近なものばかりです。したがって、一部の方だけを悩ませる特別な問題とはいえません。放っておくと、成長や健康に悪影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。ここでは、こどもが睡眠不足になる原因と睡眠不足がこどもに与える影響、睡眠不足の解消方法などを解説しています。お困りの方は参考にしてください。
こどもが睡眠不足となる原因
こどもにとっての1日の理想的な睡眠時間は、小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間と言われています。午前7時に起床する場合は、午後の9時に就寝する必要があります。文部科学省が発表している資料によると、小学生の14.9%、中学生の24.8%、高校生の31.5%が1週間の睡眠時間に対して「十分ではない」と回答しています。よくある原因として、以下のものがあげられます。
【睡眠不足の原因】
- スマホを深夜まで利用している
- ゲームなどで夜遅くまで遊んでいる
- 保護者の帰宅が遅い
- 勉強や宿題で忙しい
- 遠距離通学や部活の朝練で早く起床する
いずれも、特別な理由とはいいにくいでしょう。睡眠不足は、こどもにとって身近な問題です。こどもに、どのような影響を与えうるのでしょうか。
出典:(PDF)文部科学省「平成 26 年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」-睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査-」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/__icsFiles/afieldfile/2015/04/30/1357460_02_1_1.pdf
出典:(PDF)J-STAGE「知っておきたいこどもの睡眠」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/3/2/3_127/_pdf
睡眠不足がこどもへ与え得る影響

睡眠不足は、こどもに次の影響を与える恐れがあります。
成長の遅れが生じる
睡眠は、こどもの成長と深く関わっています。このことは、入眠直後の深い睡眠時に、成長ホルモンが多く分泌されることを考えればわかります。成長ホルモンの主な働きは、骨や筋肉、各器官を成長、発達させたり、性的な成熟を促したりすることです。したがって、睡眠不足が続くと、成長に遅れが生じる恐れがあります。具体的には、身長が思ったように伸びない、体重が思ったように増えないなどが考えられます。睡眠不足を軽く考えないほうがよいでしょう。
体内時計が乱れる
睡眠不足は体内時計にも影響を与えます。体内時計と深く関わっているのが、自然な睡眠を促す睡眠ホルモン「メラトニン」です。メラトニンの分泌は、朝に明るい光を浴びて体内時計がリセットされるとストップします。再び、分泌が始まるのは約14~16時間後です。夜更かしをするなど生活リズムが乱れると、体内時計も乱れるため眠気を催す時刻や目覚める時刻も乱れてしまいます。つまり、就寝時刻になっても眠れなかったり、起床時刻になっても起きられなかったりすることがあるのです。また、成長ホルモンの分泌に悪影響を与えることも考えられます。睡眠不足が続いている場合は、体内時計の乱れにも注意が必要です。
情緒不安定になる
睡眠時間は、こどもの心の健康とも深く関わっています。文部科学省が発表している資料で、次の日に学校がある日の就寝時刻が遅いほど、なんでもないのにイライラする小学生、中学生の割合が高いことが示されています。うつ・不安との関わりにも注意が必要です。東京大学が発表している資料で、平日夜間の睡眠時間が7.5時間未満の中学生、高校生は「うつ・不安のリスク有り」と判定される生徒の割合が、基準群(男子:睡眠時間8.5~9.5時間、女子:睡眠時間7.5~8.5時間)と比べて優位に高かったことが示されています。睡眠不足は、こどもの精神的な不調を引き起こす恐れもあります。
出典:(PDF)文部科学省「平成 26 年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」-睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査-」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/__icsFiles/afieldfile/2015/04/30/1357460_02_1_1.pdf
出典:(PDF)東京大学「思春期のこどもは夜何時間眠ったらよいのか?〜精神保健の観点から〜」
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400043770.pdf
免疫力が低下する
こどもの睡眠不足は、健康にも悪影響を与える可能性があります。具体的な影響としてあげられるのが免疫力の低下です。睡眠中は副交感神経が優位になることで、免疫機能に関わるリンパ球が増え、免疫力が維持されます。また、睡眠中に多く分泌されるメラトニンには細胞の老化などの原因となる活性酸素を取り除く抗酸化作用があります。また、過去に行われた研究で、遅い就寝時刻、短い睡眠時間が、不規則な間食摂取、運動不足などとならぶ、肥満に関連する生活習慣としてあげられています。肥満は、生活習慣病や循環器疾患のリスクを高める状態です。睡眠不足がこどもの健康に与える影響は小さくありません。
出典:(PDF)日本小児循環器学会「富山出生コホート研究からみた小児の生活習慣と肥満」
https://jspccs.jp/wp-content/uploads/j2405_589.pdf
記憶力が低下する
睡眠には、学習内容を整理したり覚えたことを強化したりする働きもあります。具体的には、睡眠中に記憶の再現、記憶の再構成が行われて、記憶、学習が進むと考えられています。これまでに行われた研究で、この説を裏付けるさまざまな知見が得られています。また、健康な5~18歳のこどもを対象とする研究で、十分な睡眠をとっているこどもの海馬の体積が、そうではないこどもより大きいこともわかっています。海馬は記憶に関わる脳の部位です。睡眠不足は、毎日の学習などに悪影響を与える恐れもあります。
出典:(PDF)国立精神・神経医療研究センター「睡眠と記憶に関する近年の知見」
https://www.ncnp.go.jp/mental-health/docs/nimh54_29-36.pdf
出典:東北メディカル・メガバンク機構「“記憶にかかわる脳の海馬は、睡眠時間が長い子供のほうが、より大きい“ 瀧靖之教授の研究が第35回日本神経科学大会・記者会見で取り上げられました。」
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/news/152
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/3/2/3_127/_pdf
こどもの睡眠不足を改善する方法
ここまでの説明でわかるとおり、睡眠不足はこどもにさまざまな影響を与えます。どのような取り組みで解消すればよいのでしょうか。ここからは、具体的な対策を紹介します。
体に適した寝具を使用する
最初に取り組みたいのが、就寝環境の見直しです。具体的には、こどもが使用する寝具を見直しましょう。こどもは就寝中にたくさんの汗をかきます。体が小さいにもかかわらず、大人と同じ数の汗腺があり、体温調整をうまく行えないためです。したがって、掛けふとん、敷きふとん(マットレス)とも、吸水性、放湿性に優れる素材が適しています。これらが低い素材を選ぶと、布団の中の湿度が高くなり、睡眠を妨げてしまう恐れがあります。基本的には、合成繊維よりもコットンなどの天然繊維がおすすめです。
また、マットレスは、体重をしっかり支えられるものが適しています。立っている姿勢と同じ姿勢になるものを選ぶとよいでしょう。体圧を分散し身体への負担を軽減するマットレスなら、寝心地がよりよくなります。
枕は、立っているときと同じ姿勢になり、仰向けで寝たときと横向きで寝たときに高さを変えられるものが適しています。こどもの成長にあわせて、中材の量を調整できるものであれば長く使えるでしょう。
就寝時間を定める
生活リズムを整えるため、就寝時間を定めることも大切です。こどもの年齢にあわせて、必要な睡眠時間を確保できる時刻を就寝時間に設定するとよいでしょう。年齢別の睡眠時間の目安は次のとおりです。
年齢 | 推奨される睡眠時間 |
---|---|
乳児 | 12~16時間 |
1~2歳 | 11~14時間 |
3~5歳 | 10~13時間 |
6~12歳 | 9~12時間 |
13~18歳 | 8~10時間 |
また、起床時間を一定にすることも大切です。朝日を浴びてから約14~16時間後にメラトニンが分泌されるため、起床時間が遅くなると眠くなる時間も遅くなってしまいます。
出典:(PDF)J-STAGE「知っておきたいこどもの睡眠」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/3/2/3_127/_pdf
朝ご飯を欠かさず食べる
朝ご飯を欠かさず食べることも、睡眠不足の解消につながります。よく噛んで食べることや消化器官を刺激することで、心身ともに目が覚めるためです。生活リズムにメリハリをつけられます。朝食をとることで、体温が上昇する点もポイントです。私たちの体温は、活動時間帯に上昇し、休息時間帯に低下します。朝食を食べて体温を上昇させることで、活動体勢を整えられるとともに、睡眠の質を高めやすくなります。
日中に適度な運動を行う
日中に体をしっかりと動かすことも大切です。習慣的な運動には、睡眠を維持する効果があると考えられています。また、昼夜のメリハリもつけやすくなります。運動のタイミングに気をつけると、睡眠の質をさらに高めやすくなるでしょう。おすすめのタイミングは、就寝の3時間前頃です。脳の温度が一時的に上昇するため、快眠を得やすくなります。脳の温度が下がり始めたときに眠気を感じるためです。ただし、就寝直前の運動や激しすぎる運動はおすすめできません。
寝る前のテレビやスマホを禁止する
テレビやスマホの画面を見ている時間をスクリーンタイムと呼びます。寝る前のスクリーンタイムを減らすと、睡眠不足を解消できる可能性があります。これらの画面から、日中の光とよく似たブルーライトがでているためです。ブルーライトには、メラトニンの分泌を抑制したり、体内時計に影響を与えたりする働きがあると考えられています。寝る前に、こどもがテレビやスマホを見ている場合は、その時間を減らしてみるとよいかもしれません。
まとめ
こどもにとって理想的な睡眠時間は小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間程度です。睡眠不足が続くと、成長が遅れたり、情緒が不安定になったり、記憶力が低下したりする恐れがあります。身近な問題ですが、軽く考えないことが大切です。こどもの睡眠不足は、寝具を見直すことや朝食を食べること、日中に身体を動かすことなどで改善できる可能性があります。まずは、こどもが気持ちよく眠れる寝具を探してみてはいかがでしょうか。